书名 战国小町苦劳谭
(资料图片)
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作者: 夹竹桃
原作:http://ncode.syosetu.com/n8406bm/
翻译工具:ChatGPT
*机器输出的翻译结果UP未做任何修正,仅供试阅。标题章节号为原翻译版的顺延。*
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千五百七十四年 七月中旬(*原文网页序列号 - 135)
静子が柴田達から相談を受けて、既に一週間が経過していた。しかし、軍議が再開されたという話は聞こえてこない。それでも静子は、便(たよ)りが無いのは良い便りとばかりに楽観視していた。
静子已经听了柴田的咨询已经过去了一周。但是,没有听到军议已经重新开始的消息。即便如此,静子仍然抱着没有消息就是好消息的乐观态度。
静子にとってはいくさの支度よりも、カカオ豆の仕上がりの方が重大事であった。期待通りに発酵が進んでいれば、そろそろ次の工程である乾燥作業に入らねばならない。
对静子来说,可可豆的加工比准备战斗更重要。如果发酵进行得很顺利,那么就需要开始下一个阶段——干燥工作了。
発酵具合を評価するため、静子は実際にカカオ豆を割って確認するカットテストを実施した。検査項目は2つ。色合いと、香りを確認し、発酵具合を評価する。
为了评估发酵程度,静子进行了裂开可可豆并进行颜色和香气检查的切割测试。测试项目分为两个:检查颜色和香气,以评估发酵程度。
発酵前のカカオ豆であれば、断面はポリフェノールの一種であるアントシアニンによる紫色を呈している。この紫色は発酵が進むほどに発酵熱で重合反応を起こし、褐色を呈するようになる。
如果是未经发酵的可可豆,其断面会呈现出一种多酚类物质花青素所产生的紫色。这种紫色会随着发酵的进行,在发酵热的作用下发生重合反应而转为褐色。
色味に次いで、香りについても確認してみる。チョコレートとは程遠い、どこか味噌を思わせるようなねっとりとしていながら、それでいて甘いような香りがする。
紧接着色泽,也要确认一下香气。尽管并非完全像巧克力,却有一种令人想起味噌的黏稠感,并带有些许甜香。
順当に発酵が進んでいれば、もっと酸味のある香りがするのだが、そこは環境の違いと諦めて乾燥工程へと移ることにした。
如果发酵顺利进行的话,会有更多的酸味香气,但是由于环境的不同,我们决定放弃这些,并转入干燥工序。
カカオ豆は重量のうち、三分の一程を水分が占める。この水分量を8〜6%程度まで減らす作業を乾燥工程と呼ぶ。
可可豆重量的三分之一左右占据了水分。将这个水分量降低到约8〜6%的工作被称为干燥过程。
原産地で実施される乾燥作業は、露地などに1メートルほどの高さに木枠を組んだ上に『すのこ』を敷き、その上にカカオ豆を並べ、天日乾燥を行う。
实施在原产地的干燥作业,是在露地等地搭建高约1米的木框架,上面铺设“栏板”,并将可可豆排列在其上,晾晒晾干。
この乾燥作業中にもじわじわと発酵が進むため、現地の土壌菌や乾燥方法によってカカオ豆の味わいが左右されることになる。
在这个干燥过程中,由于发酵在慢慢地进行着,因此取决于当地的土壤菌和干燥方法,可影响可可豆的味道。
現代では、この乾燥作業を経て最終品質チェックが実施され、合格したカカオ豆のみが麻袋(標準60キロ)に詰め込まれ、世界各地へと輸出される。
在现代,通过这种干燥过程进行最终质量检查,并仅将合格的可可豆装入标准60公斤麻袋中,并出口到世界各地。
「良い感じに乾燥しているね」
"感觉很干燥舒适" (gǎn jué hěn gān zào shū shì)
日本は温暖湿潤気候であり、長引いた梅雨の影響もあり露地での天日干しが難しい。そこで静子は、当初ビニールハウス内で天日干しを行おうと考えた。
日本气候温暖湿润,长时间的梅雨季节影响使露天晾晒变得困难。因此,静子最初考虑在塑料温室内进行晾晒。
しかし、ビニールハウス内は温泉の廃湯が通されており、非常に湿度が高い環境となっている。明らかに乾燥工程に不適切な環境であったため、新たに廃材や端材を流用した小型のビニールハウス(透明ファクチス製)を作り上げた。
然而,在温室中通入了温泉的废水,使得内部的湿度非常高。显然,这是一个不适合干燥工艺的环境,因此我们建造了一个小型的使用废料和木材制成的透明塑料温室。
今後の栽培拡張に伴って、いずれは大型の乾燥施設が必要となるが、当面はこの施設で運用をすることになる。乾燥を主目的としているため、通気性を重要視した設計をされており、木材が多用されていた。
今后的种植扩张将需要建造大型的干燥设施,但目前将在这个设施内运营。因为主要目的是干燥,所以设计强调通风,大量使用木材。
高価な透明ファクチスを使用する部分が天井部分のみとなるため、印象としてはビニールハウスというより天窓付きの納屋に近い。
由于使用昂贵的透明塑料板只限于天花板部分,因此印象更像是带天窗的谷仓,而不是温室。
専用の設備を用意したこともあり、雨天があったにもかかわらず、カカオ豆は良く乾燥していた。しかし、ここまでやっても「チョコレートの材料が出来た」だけであり、チョコレートに仕上げるには更なる作業が待っていた。
由于准备了专用设备,即使下雨天,可可豆也被完全干燥。但即便如此,仅仅达到“巧克力材料已制备完成”的程度,还需要进行进一步的工作才能完成制作巧克力。
「次はカカオ豆を、カカオマスにまで加工しないとね」
"下次需要将可可豆加工成可可块"
乾燥を終えたカカオ豆は当然硬い外皮に包まれており、カカオマスに加工するにはこれを取り除いて中身を取り出す必要がある。
经过干燥处理的可可豆自然被硬壳所包裹,需要去除外壳以取出内部可可酱。
その為、まずカカオ豆を軽く焙煎し、外皮(ハスク)にヒビを入れる。次いで水車動力の粉砕機に掛け、カカオ豆を荒く粉砕する。
因此,首先要将可可豆轻微烘焙,切开外皮(壳)。然后,使用水轮动力研磨机对可可豆进行粗粉碎。
粉砕出来たカカオ豆を、唐箕(とうみ)(籾選別用の水車動力を用いた大型のもの)と篩(ふるい)を用いて外皮を取り除く。残った胚乳(ニブ)部分をカカオニブと呼ぶ。
利用唐箕和筛子,去除已经研磨好的可可豆的外皮。剩下的胚乳部分称为可可果核。
このニブには脂質であるカカオバターが重量比にして5割以上も含まれている。このニブを細かく磨り潰し、ペースト状にすることを磨砕と呼ぶ。
这个豆渣中含有重量比五成以上的脂肪可可脂。将这个豆渣粉碎成细小的糊状物被称为磨碎。
こちらも水車動力に繋がれた、技術街の職人謹製の磨砕機によってニブは細片へと粉砕される。細かく磨砕されるにつれ、含有されるカカオバターが遊離し、摩擦熱で溶けることによってペースト状へと変わるのだ。
这里也通过连接到水轮机动力的技术城中职人制作的磨粉机,将可可豆磨成细片。随着磨砕的加深,含有的可可脂被释放出来,并在摩擦热的作用下溶解成糊状。
磨砕機の最終工程であるローラー部分から、複数のローラー間を通過してペースト状となったカカオマスが搬出される。このカカオマスはローラーに貼り付いているため、鉄製の刃がこれをこそげ落とす事によって取り出された。
从研磨机的最终工艺过程——辊部分,可搬运出多个辊之间经过并变成糊状的可可块。这些可可块沾附在辊上,因此需要用铁刀刮下来才能取出。
現代の機械であれば、一度の作業で充分な粒子径になるまで磨砕されるのだが、戦国時代の原始的な機械にそこまでの精度を求めるのは酷である。
如果用现代机器,一次加工就足以磨碎到足够的粒径,但在战国时代原始的机器上要求如此精密的粉碎是不公平的。
よって取り出されたペースト状のカカオマスを再び磨砕機に掛け、繰り返し処理することで精度を補てんする。
通过将提取出来的糊状可可团再次放入磨粉机中,并多次处理,以弥补其精度。
こうして滑らかなペースト状となったカカオマスは、砂糖と無糖練乳(全粉乳が理想的だが、製造難度が高いため諦めた)と混合され、長時間かけて混ぜ合わされることとなる。
这样,变成光滑的糊状的可可酱会被与糖和无糖炼乳(虽然全脂乳粉是理想的,但由于制造难度高而放弃)混合在一起,并花费很长时间混合在一起。
カカオマスの本質は油脂成分にあり、液糖や通常の牛乳とは容易に混ざらないため、水分を極力取り除いた状態で混ぜ合わせる。それでもペースト状の物体に粉末等を溶け込ませるのは時間が掛かり、しかも大きな抵抗が掛かるため強い力が必要となった。
可可脂的本质在于其油脂成分,不容易与液态糖和普通牛奶混合,因此需要尽可能地去除水分后混合。即使如此,将粉末等物质溶解成糊状物体也需要时间和大量的力量。
そのため、ここで使用する混合機(ミキサー)の動力は畜力となる。棒に繋がれ、混合機の周囲をぐるぐると回る牛の姿は、家内制手工業を彷彿とさせた。
因此,在这里使用的混合机(搅拌器)的动力是畜力。绑在棒子上,围绕着混合机旋转的牛,让人想起家庭手工业。
そして出来上がった物はチョコレート生地(ドゥ)と呼ばれ、チョコレートをチョコレートたらしめる特色のある工程へと進む。
然后制成的东西被称为“巧克力面团(Dou)”,并进入具有使巧克力成为巧克力的特色工艺。
1879年にスイスのロドルフ・リンツによって生み出され、今日に至るまで100年以上もの間、チョコレート製造の心臓部と呼ばれるのがコンチング工程である。
1879年,由瑞士的罗德尔夫·林茨创造,至今已有100多年历史,被称为巧克力制造的核心部分的是研磨工艺。
コンチングとは、簡単に表現するなら『練る』作業となる。磨砕されたチョコレートドゥを、コンチェと呼ばれる機械で、延々と練り続ける。
制粉是指将研磨过的巧克力豆在一种叫做“研磨机”的设备中不断搅拌,这是一个“搅拌”的过程。
長時間休まずに一定の速度で練り続けるため、再び水車が動力となり、コンチェを動かし続ける。このコンチングを行うことで、ドゥから油分が滲みだし、徐々に軟化を始める。
源于水轮机的动力,继续以恒定的速度持续混炼,以便不会长时间休息,从而继续驱动konchi。通过进行此Konching,Doo开始渗出油分,并逐渐变软。
原初のコンチェでは72時間掛かったとも言われる程の長時間を掛けて練り続けることで、水分や不快臭の元となる成分が蒸散し、取り除かれて特有のアロマが立ってくる。
传说最初的康奇面需要连续搓揉长达72小时,这样可以让水份和引起不适的气味消散,同时散发出独特的香气。
更に練り続けることで水分と油分が混ざり合う『乳化』が進行し、トロリとしたチョコレート特有の舌触りが生み出される。
进一步地搅拌会促进水分和油分的混合,从而发生“乳化”,产生令人垂涎的特有口感,使巧克力变得浓郁细腻。
この工程を終えた後、更にテンパリングと呼ばれる温度調整を行い、カカオバターの結晶構造を揃えることにより、艶やかで冷えると硬くしまったチョコレートとなる。
完成此步骤后,还需进行称为回火的温度调整,通过使可可脂的晶体结构均匀化,制成具有光泽和放冷后硬度适中的巧克力。
現代人であれば当たり前に口にするチョコレート菓子だが、その裏には実に手間暇の掛かった製造工程が存在している。
现代人都认为巧克力是一种非常普通的甜点,但是在背后,其实制造巧克力需要非常繁琐复杂的工艺过程。
静子は完成形を知っているため、迷いなく製造を進められるが、製法が編み出されるまでには非常に長い歴史があった。
静子知道完整的制作方法,因此可以毫不犹豫地进行制造,但研发出制作方法需要非常漫长的历史。
16世紀にヨーロッパへと伝来したカカオは、19世紀にチョコレートの四大革命と呼ばれる技術革新が現れるまで、チョコレートとは飲み物を指す言葉だった。
16世纪传入欧洲的可可,直到19世纪出现了被称为巧克力四大革命的技术革新之前,巧克力一词指的是饮料。
ただし、当時のチョコレートは現代のココアなどとは違い、苦味が強く、異常に油っぽいものだった。そのため、当時は嗜好品というよりも薬として扱われ、お世辞にも美味い飲み物ではなった。
然而,当时的巧克力与现代的可可等不同,味道苦涩,异常油腻。因此当时被视为药物而非美食,可以说并不好喝。
その後、長い間薬であり続けたチョコレートだが、19世紀に入ると様々な技術革新が起きた。その先駆けとも呼べる発明は、オランダの食品メーカー『バンホーテン』で産声を上げた。
此后,巧克力长时间保持为药物,但进入19世纪,各种技术革新出现。其中一项开创性发明是荷兰食品制造商“Van Houten”推出的。
バンホーテンの創業者であるカスパルス・ファン・ハウテンは、1828年にカカオ豆に50%以上も含まれているカカオバターを油圧式圧搾機に掛けることにより、半分程度まで減らす方法を編み出した。
班霍腾的创始人卡斯帕斯·范·豪滕于1828年发明了一种方法,通过将可可豆中含有超过50%的可可脂用液压压榨机压缩,将其减少了大约一半。
更に乾燥させたカカオマスを砕いて粉末状とすることで、お湯に溶けやすいココアパウダーとして流通させた。
进一步将干燥的可可豆打碎成粉末状,制成易溶于开水的可可粉并流通销售。
続く二代目のクーンラート・ヨハネス・ファン・ハウテンが、カカオ豆をアルカリ液で処理する手法『ダッチ・プロセス』を開発する。これにより発酵過程で生産された酸を中和し、水溶性を高めた『ココア』が誕生する。
接踵而来的第二代库纳特·约翰内斯·范·豪滕开发了一种用碱液处理可可豆的方法,即“荷兰法”处理方法。它可以中和发酵过程中产生的酸,提高可溶性,从而诞生了“可可粉”。
この技術革新を皮切りに1847年にお湯に溶かさず直接食べられる固形チョコレートを生み出し、1875年に株式会社ネスレの創業者アンリ・ネスレが、よりまろやかなミルクチョコレートを開発した。
这项技术革新开创了先河,于1847年生产出了可直接食用的固态巧克力,1875年Nestle公司的创始人亨利·内斯莱开发出更加顺滑的牛奶巧克力。
四大革命の最後は、1879年にロドルフ・リンツが偶然の産物(諸説あり)により、口の中でとろける柔らかいチョコレート(後にリンツ・チョコレートと呼ばれるブランドとなる)を作る上で重要なコンチングの製法を発見した。
四大革命的最后是在1879年,罗德尔夫·林茨通过偶然的产物(有多种说法)在口中融化的柔软巧克力中发现了重要的拌和工艺,后来被称为林茨巧克力品牌的关键制造工艺。
これら四大発明が誕生するとスイスにリンツ社、ネスレ社、イギリスにキャドバリー社、アメリカにハーシー社などのチョコレート企業が誕生し、工場による大量生産によって、それまで高級品であったチョコレートが、一般大衆の手にも届く物となり、普及していくことになる。
随着这四大发明的诞生,瑞士的林茨公司、雀巢公司,英国的吉百利公司,以及美国的好时公司等巧克力企业纷纷涌现,通过工厂大规模生产,使得此前只是高档货的巧克力变得面向大众,逐渐普及。
余談だが、人類にとっては美味なる甘味でしかないチョコレートだが、犬や猫にとっては有害な物質となる。チョコレートには、テオブロミンと呼ばれるキサンチン誘導体が存在する。
然而,对于人类而言,巧克力只是一种美味的甜食,但对于狗和猫而言,它却是一种有害物质。巧克力中含有一种名为可可碱的黄嘌呤衍生物。
これはカフェインなどの仲間であり、人間にとっては余程大量に摂取しない限り害とならない。しかし、犬や猫などはテオブロミンの代謝速度が遅く、過度の興奮状態や脱水症状を引き起こし、最悪の場合は死に至る。
这些物质属于咖啡因等,对人类来说,除非摄入大量,否则不会有害。然而,狗和猫等动物的可可碱代谢速度较慢,可能导致过度兴奋或脱水症状,并在最糟糕的情况下导致死亡。
「コンチングには丸一日以上かかるから、さっさと始めよう」
「制作陶器需要花费至少一整天时间,所以赶紧开始吧」
各種原料を投入し、水車動力を伝えられたコンチェが稼働を始めた。後は定期的に様子を見守りながら、練り上がるのを待つのみだ。
投入各种原料,让水车动力传递给Conche,开始运作。然后只需定期观察并等待混合物形成即可。
こうして若干の余裕を得た静子だが、そこへまたしても横やりが入った。
这样一来,虽然静子稍微松了口气,却又出现了另外一个问题。
「……はあ、頭が痛い」
「......头痛」
伝令が持ち帰った手紙を読んで、静子は思わず嘆息した。文の内容は加賀一向宗討伐の件であり、極力関わらないようにしていたのだが、悪い方へと転んだようだった。
信使拿回来的信信被静子读了一遍,不禁叹了口气。信中提到的内容是关于讨伐加贺一向宗的事,尽管她极力避免涉及此事,但情况似乎已经往坏处转移了。
柴田は関係者を集めて軍議を開くのではなく、静子の案を決定事項として文とし、各武将へと通達した。現場で直接話を聞いていた柴田達ですらすぐさま理解できなかった内容だけに、箇条書きの文章を渡されただけの武将たちは困惑した。
柴田没有召集相关人员开军事会议,而是将静子的提议作为决定事项,在文本中通知各武将。即使是在现场直接听到讲话的柴田等人也很快无法理解内容,只有被交接了要点的武将们感到困惑。
生憎と柴田自身が送った文は添えられておらず、どのような内容が書かれていたのかは知り得ないが、静子のところへ問い合わせがくる以上、致命的に説明が足りていない気がした。
很遗憾,柴田本人发送的信件未附上,无法得知其内容。但是由于静子接到了询问,觉得解释明显不足,具有致命性。
柴田の文には静子発案とあったそうであり、手紙を通しての迂遠なやり取りではなく、集まって軍議を開き、その場に静子も参加して欲しいと記されていた。
据说柴田的文章中提到了静子的想法,并且他写道,不是通过冗长的书信往来,而是聚集在一起开会议,希望静子也能参加。
(確かに柴田様は主人の思惑如何に依らず、命じられたことを愚直にこなす御仁だから仕方ないけど……他の人達は、その結論になるに至った経緯とかも当然知りたいよね……)
(确实,柴田先生是一个愚直地执行命令的人,不管主人的想法如何,这是没办法的……但其他人当然也想知道导致这个结论的过程和原因……)
軍議で静子に期待される役目は、草案の内容を全員に判り易く伝え、具体的な案へと落とし込む軍師だ。
在军议中,静子承担了一个非常重要的角色,即将草案的内容传达给所有人,并将其转化为具体的案例,因此她被称为战略顾问。
文を出したのが柴田でなく、光秀や秀吉であったなら、両名とも策謀を巡らせる智将タイプであるため、入念な根回しをした上で軍議を開いたのであろう。
如果不是柴田,而是光秀或秀吉提出了这篇文章,由于他们都是精明谋略型将领,所以他们可能会在充分准备后进行军事会议。
対する柴田は「かかれ柴田に退き佐久間」と謳われたように、先鋒を任されることの多い猪突猛進タイプの猛将だ。一度命が下されれば迷いなく従うのが当然と考えたのだろう。
柴田则被誉为“曾经的柴田”,是一个常被委任为先锋的冲锋陷阵型的猛将。他认为一旦命令下达,毫不犹豫地听从是当然的。
しかし、碌に説明もされぬままいくさ場に立てる豪胆な者は多くない。当然そのような命には従えぬと突っぱねる事となり、柴田としては身を惜しむ臆病者と激昂することになる。
然而,没有经过充分解释就能够勇敢地站在战场上的人不多。从自然而然的角度来看,拒绝服从这样的命令会遭到拒绝,柴田则会愤怒地认为这是懦弱的人。
こうした双方のすれ違いが、悪循環を生み、両者の溝が決定的なものとなる前に静子に白羽の矢が立った。
这种双方的误会会导致恶性循环,直到双方的鸿沟不可挽回之前,静子才被选定。
「この話、匙加減を間違えると加賀一向宗征伐どころじゃなくなるね」
“如果讲话的程度掌握不好,那可不是简单的加贺一向宗征讨问题。”
加賀一向宗征伐の総大将は柴田なのである。総大将の命に従わぬ集団など、もはや軍と呼ぶに値しない。仮にも加賀一向宗は何十年にも亘って加賀を統治し続けている。
加贺一向宗征讨的总大将是柴田。不服从总大将命令的集团已经不值得称为军队了。加贺一向宗在几十年间一直统治着加贺。
軍としての統率を欠いた状態で相手出来るような敵ではあり得ない。何よりも加賀一向宗は、長島一向宗よりも狂信的だと言う情報が静子には齎されていた。
没有军队统率能力的敌人是无法对付的。最重要的是,静子得到了消息,加贺一向宗比长岛一向宗更加狂热。
宗教的な熱狂というのは弾圧される程に燃え上がる。その信仰心を武器として集団に纏め上げ、制御している指揮中枢が存在するという事だ。
宗教狂热被镇压得越强,信仰之火就燃烧得越旺盛。有一个指挥中心掌控信仰心作为武器,团结集体并加以控制。
「日程的に見て、根回しは無理そうだし……ある程度アドリブで乗り切る必要があるかな。取りあえず判断材料が無いと話にならないから、派閥や勢力間の情報を把握しよう」
“从日程上看,预先策划可能不太可能……需要在一定程度上靠即兴应变来解决。毕竟,没有判断材料就没法讨论。因此,需要了解派系和势力之间的相关信息。”
そう呟いた静子は、蕭と彩に命令を出した。
轻轻嘀咕着,静子发出了对萧和彩的命令。
6月下旬となり、ようやく軍議が催された。一向に進捗を見せない家臣達の様子に、信長が苛立っているという噂が、まことしやかに囁かれるようになっていた。
六月下旬终于召开了军议。盛传信长对无进展的家臣们感到不满的谣言开始传得沸沸扬扬。
軍議の会場としては、静子の運営する学校の講堂となった。大人数が一堂に会するだけの広さがあり、周囲に隠れる場所など無いため、兵を伏せたり、武器を隠したりと言った良からぬことなど考えようもない。
作为军事会议的场所,静子经营的学校礼堂被选定。该礼堂有足够容纳大量人员的空间,周围没有任何可以藏匿的地方,因此不可能考虑隐藏士兵或隐藏武器等不当行为。
会場の警備には静子の子飼い部隊が立ち、入念な下調べをした上で人払いが為されていた。会場には柴田や、光秀、秀吉と言った主だった武将は既に到着しており、他の武将たちも続々と集まって来ていた。
会场的警备由静子的手下队伍负责,经过认真的调查后,场内的人员得到了安排。柴田、光秀、秀吉等主要武将已经到场,其他武将也纷纷聚集过来。
しかし、柴田の文が齎した不信感は如何ともしがたいのか、皆がそれぞれに不満を隠そうともせず、始まる前からギスギスとした空気が漂っていた。
然而,柴田的言辞带来的不信任感难以消除。尽管大家都在试图隐藏自己的不满,但紧张的气氛从一开始就弥漫在空气中。
「……以上が私の案になります」
"以上就是我的建议"
総大将である柴田の面子もあるため、静子は黒板を引っ張り出し、絵や図を描きながら文の内容を補足する(・・・・)形で自分の案を説明した。
由于总大将柴田的面子在场,静子拉出黑板,边画图边说明自己的提案内容。
苦労の甲斐あってか、武将たちの反応は上々であり、柴田の指示が荒唐無稽なものではないと納得できたという表情を浮かべている。
经过辛苦的努力,武将们的反应非常好,他们的表情显示出他们已经认可了柴田的指示并且不是胡言乱语。
しかし、ここまでの説明はスタートラインに過ぎない。加賀一向宗をいくさ場に立たせるまでの武功を問わず、その後の成果に応じて武功を決めるという大筋は伝わった。
然而,到目前为止的说明只是起点而已。无论考虑加贺一向宗在战场上的功绩与否,都要根据其随后的成就来确定功劳的大致情况。
では、具体的に誰がどの役割を担い、どの位置に布陣するのかという具体策へと軍議が進んでいく。こうなると静子の出番はなく、皆の案が出揃うまで聞き役に徹することにした。
随着讨论的深入,军事会议逐渐具体化了谁将担任哪个角色并在哪个位置布阵。这时候静子没有出现的必要,她决定听取大家的建议并保持沉默。
全員が結論の出ない軍議に疲労を覚えた頃、光秀が周囲を見渡しながら告げた。
当所有人都对决定没有结果的军事会议感到疲劳时,光秀环视四周并宣布了:
「ふむ……このままでは堂々巡りですな。誰もが少しでも自分にとって有利な立ち位置を求めるため、話が一向に纏まりませぬ」
“嗯…这样下去只会陷入僵局。每个人都试图寻找对自己有利的立场,导致谈话一直没有结束。”
軍議が紛糾し、誰しもが苛立ちを覚える中、光秀が誰もが判り切っていることを態々(わざわざ)口に出し、空気の悪さを決定づけた。
军议陷入混乱,每个人都感到愤怒不安,而光秀却特意说出了每个人都已经明白的事情,让气氛更加恶劣。
静子は光秀の間の悪さ、融通の利かなさにため息を吐くと、頃合いとみて手を挙げて、声を張った。
静子看到光秀的无能和刚愎自用,不禁叹息,随后举起了手,大声说道。
「発言の許可を」
"允许发言"
「どうぞ」
请返回翻译后的内容,不包括原始文本:「请」
皆が光秀の放言に気色ばむ中、柴田が即座に許可を出した。
众人在光秀的放言中感到不安之际,柴田立即同意了。
「明智様がご指摘されたように、このままでは徒(いたずら)に時を費やすのみ。ここは一つ、絶対に外せない布陣から確定していっては如何でしょう? この軍議に臨むにあたって、皆様方の状況を調べております。元より完全なる平等な配置など不可能なのですから、大きな部分を固めてから詳細を詰めれば宜しいかと」
正如明智所指出的那样,这样做只是浪费时间而已。我们最好从必须要有的布阵开始,逐步确定下来。在进行这次军议之前,我已经调查了大家的状况。因为完全平等的配置是不可能的,所以我们最好先确定大体框架,再深入细节。
「参考までに絶対に外せない布陣とやらを伺ってもよろしいか?」
“可以问一下绝对不能撤下的布阵作为参考吗?”
竹中半兵衛が静子に詳細を尋ねる。静子が半兵衛の主人たる秀吉を見ると、彼は静子に向けて無言で頷いた。その仕草から、秀吉の窮状を軍議の場で公表しても構わないと受け取った。
竹中半兵卫询问静子细节。当静子看到半兵卫的主人丰臣秀吉时,他沉默地点了点头。从他的举止中,静子得出结论,即在军事会议上公开秀吉的苦境是可行的。
「では……羽柴様には軍備の提供を担って頂きます。新領地の近江は未だ収穫が安定せず、今浜への投資で軍資金や軍需物資の備蓄が心もとないと聞き及んでおります。資金や物資は我が軍が提供し、それを各所へと届ける兵站の一翼を担う人員を出して頂きたく思います」
“那么……请羽柴大人提供军备支援。听说在新领地近江尚未稳定收获,在对今浜的投资中,军需资金和物资的准备是不够充足的。我们会提供资金和物资以供使用,并希望派遣人员来负责运送到各地的兵站。”
「そのお申し出はありがたい。恥ずかしながら、今浜は戦災復興の最中(さなか)。治安維持のためにも兵は必要であり、国許を留守にする訳にも参りません。お借りした資金や物資は、税収が落ち着き次第、徐々にお返しいたします」
“您的提议非常感谢。但是很抱歉,目前我们正处于战后恢复的最关键时期。为了维持治安,我们需要军队,不能让国内空虚。所借债务和物资将在税收恢复后逐渐偿还。”
秀吉と目配せを交わしあった半兵衛が応えた。少なくない借金を背負うことになるが、無い袖は振れない。秀吉としても自分から言い出せなかった弱みを明らかにし、借金をしてでも金も兵も出したとして、一応面目が立つ。
半兵卫与秀吉交换了眼神后回答道。虽然将背负不少债务,但是没有手头的钱可用。秀吉也一样,明显了自己的弱点,接受了借债,也提供了资金和士兵,总之面子上算是挽回了一些。
及第点を貰えたことに、静子はホッと胸を撫で下ろした。
及第点被颁发给静子时,她松了一口气。
「では、次に明智様についてですが、明智様には加賀一向宗が越前へと逃げ込まぬよう抑えとなって頂きます。その際に、我が軍の鉄砲衆を300と、十分な弾薬を提供致します。更に山狩りに長けた兵と軍用犬などを予備兵として、5000お貸しいたしましょう」
接下来是关于明智先生的事情。请明智先生抑制加贺一向宗不要逃跑到越前地区。这时候,我们将提供300支火枪手和充足的弹药。此外,我们将提供5000名擅长山林狩猎的士兵和军用犬作为备份。”
光秀には加賀一向宗が越前へと落ちのびないよう、国境(くにざかい)を固める役を担ってもらう。中心的な人物が一人でも生き延びれば、再興される可能性があるため、他者より兵を動員し易い光秀が適任と言えた。
让光秀担任稳固国境,以确保加贺一向宗不会落到越前。如果核心人物能够生还下来,就有可能再次复兴,因此光秀比其他人更容易调集兵力,是一个合适的人选。
熟練の鉄砲衆300を以て街道を固めれば、少々の軍勢では到底突破できない防備を築くことが出来る。道なき道を進もうにも、軍用犬を連れた兵士が巡回する山を抜けることは難しい。
如果使用熟练的三百名枪手来堵塞道路,就可以建立起无法突破的防御。即使想要走荒山野岭的小路,也难以穿过巡逻着军用犬的士兵防线。
「静子殿のご配慮、痛み入る」
「静子殿的体贴,令人感到不好意思。」
静子の追加派兵によって、光秀は遊撃軍を組織でき、加賀一向宗攻めへと回す兵力を増やすことが出来る。この二人の布陣が決まれば、後は自動的に振り分けが始まる。
通过静子的增援,光秀可以组建游击战队,增加对加贺一向宗的攻击力。一旦确定了这两人的部署,分配就会自动开始。
総大将は柴田であるため、柴田派の武将たちが纏まり、次いで明智派の武将たちが越前付近を担当することになる。羽柴派の武将たちが少々割を食った形となるが、代わりに損耗が低く抑えられるため表立って不満を述べる者はいなかった。
总大将是柴田,因此柴田派的武将们团结一致,其次是明智派的武将们负责越前附近的事务。羽柴派的武将们有点吃亏,但为了降低损失,没有人公开表达不满。
静子の発言を以て、再び活気づき始めた軍議は、静子が身を切ったことで『三方一両損(さんぼういちりょうぞん)』として辛うじて収まった。
在静子的发言下,气氛再次振奋起来。静子作出了牺牲,三方面都有所损失,最终这场战争侥幸结束了。
一度(ひとたび)致命的な不和を招けば、如何な織田軍とて内部崩壊は免れ得ない。静子は一時的な損をしてでも、織田軍全体としての得を取った。
一旦引起致命的的分歧,即使是织田军也难以避免内部瓦解。静子为了整个织田军的利益,愿意暂时承受损失。
一時は崩壊の危機も危ぶまれた軍議は、滞りなく終わりを迎え、柴田が締めの言葉を告げる。
曾一度被认为面临崩溃危机的军议,在未遇到阻碍的情况下迎来了结束,柴田发表了总结发言。
「では各々方(おのおのがた)、決して準備を怠るなかれ」
“现在各位,请务必不要懈怠,认真准备。”
この言葉をもって軍議は解散した。
用这句话解散了军事会议。
この話は、数日の時を置いて信長の耳へも届く。信長は報告を聞き終えると、上機嫌でそれぞれの行く末を見守ることとした。
这个故事过了几天后传到了信长的耳中。信长听完报告后心情很好,决定关注每个人的前途。
一方、静子はというと胃の痛くなるような軍議を終えたため、肩の力を抜いていた。軍議の前から準備を進めていたため、それぞれの武将への支援については、既に静子の手を離れていた。
一方,静子因为已经完成了令她感到胃痛的军事会议而松了一口气。由于她从会议前就已经在做准备工作,所以对于每个武将的支持已经不再是静子所要考虑的问题。
再び自由な時間を捻出出来た静子は、中断していたチョコレート作りを再開した。コンチングが終わり、冷やし固められたチョコレートを取り出すと、最後の工程であるテンパリングに取り掛かった。
静子又腾出了自由的时间,便开始继续自己中断的巧克力制作。当巧克力混合完成,放入冷藏定形后,她就开始了最后的工序——回火。
テンパリングとは温度調整であり、まず湯煎を用いてチョコレートを50度近くまで熱して溶かす。液状化したチョコレートを湯煎から出し、氷水などを利用して28度前後まで冷やす。
"淬炼是温度调节的过程,首先使用水浴将巧克力加热到接近50度并融化。将液态巧克力从水浴中取出,并利用冰水将其冷却到约28度左右。"
その後、再び湯煎に掛けてチョコレートを温め、30〜32度ほどの温度を維持する。このテンパリングの温度は、チョコレートメーカーや、チョコレートの種類によって変化する。
之后,再次将巧克力放在水浴中加热,保持在约30-32度的温度。这个温度取决于巧克力的制造商和种类。
静子の場合は不純物が多い事を想定し、余裕を持った温度設定をしている。
考虑到静子存在较多杂质,我们进行了宽裕的温度设置。
こうして艶やかな状態へと仕上がったチョコレートを、事前に用意しておいた型に流し込んで冷やせば完成となる。理想を言うなら、エージングと呼ばれる定温倉庫での熟成期間が必要だが、高望みと諦めていた。
将制作成光彩夺目的巧克力倒入预先准备好的模具中并冷却就可完成。理想情况下需要经过称为“陈年”的恒温仓库中的成熟期,但不要抱太高的期望。
チョコレートに仕上げてしまえば賞味期限が三か月ほどに限られてしまう。このため、今回使用しない分については、コンチング前のカカオマスの状態で保存することにした。
如果将巧克力制成品,保质期将被限制为三个月左右。因此,这次不使用的部分决定在研磨前的可可豆状态下保存。
冷やし固めたカカオマスの状態ならば、温度にさえ気を付ければ一年間は保存が可能となる。
如果是冷冻的可可物质,只要注意温度,可以保存一年。
「凄く手間が掛かったけど、ようやく完成だ! んー……流石に現代の市販品よりも数段劣るよね。まあ、粉が吹かなかっただけ上等かな」
"虽然花了很多时间,但终于完成了!嗯...确实比现代市售品差了好几个档次。不过,至少没有粉尘,算作好的了。"
冷えて固まったチョコレートを型から剥がし、皿の上に並べる。剥離が上手くいかなかったもの、ヒビなどが入った物を取り除き、見目の良い物を選別して信長へ献上する分とした。
将冷却凝固的巧克力从模具中取出,排列在盘子上。挑选外观完好无裂缝的巧克力,献给信长。
静子は、剥離に失敗して割れたチョコレートの欠片を口に入れ、ゆっくりと味わった。
静子把剥下来失败而断裂的巧克力碎片放入口中,慢慢地品尝着。
「記憶にあるチョコレートはもっと滑らかに溶けたけど、舌の上でざらつく上に喉に絡むなあ……」
「我记忆中的巧克力溶化得更加顺滑,可是在舌头上却感觉粗糙,甚至噎住了喉咙……」
静子は不満げにぼやいているが、ご相伴に与(あずか)った男衆は驚いていた。
静子不满地抱怨着,但与她同行的男子们都感到惊讶。
「なんと! 口に入れた時は、かき餅のように固いのに、口の中で干し柿のように蕩けた!」
“真是太神奇了!刚开始吃的时候非常硬,像刨花饼一样,结果一放进嘴里就软得像晒干的柿子一样融化了!”
「わっはっは、なんだこりゃ? 苦いのか甘いのか良くわからん。だが、この味は酒に合いそうだ」
「哇哈哈,这是什么啊?是苦是甜我都不太清楚,但这味道应该很适合搭配酒。」
献上品の準備をしている間に、チョコレートの失敗作は慶次たちの腹へと収まった。未知の食感と、引き締まる苦さと、後を引く甘さに魅了され、あっという間にチョコレートは消えてしまった。
在准备上等品期间,制作失败的巧克力被景次等人吃完了。他们被未知的口感、收紧的苦味和回味无穷的甜味所吸引,瞬间就吃光了巧克力。
「君たち、食べるのは良いけどね。もうちょっと味わってほしいかな? それを作るのに凄く苦労したんだからね?」
「你们,吃东西没问题,但可以好好品味一下吗?毕竟我可是费了很大劲才做好的啊?」
「悪い悪い。食べだしたら、止まらなくてな」
"不好意思。一旦开始吃,就停不下来了。"
「まったく……上様の所へ献上に向かうから、出立の支度をしておいてね」
「真是的……我要去向上様献上,所以要准备出发了。」
それだけ告げると、静子は隠し持っていた皿を抱えて邸宅へ入った。目当ての人物はすぐに見つかった。予想外の珍客をも連れていたのだが。
一听到这句话,静子就抱着她藏着的盘子进入了府邸。她很快就找到了她要找的人。可是,她还带了一位意外的客人。
「静子様、上様の許へと向かわれたのではないのですか?」
“静子女士,您并没有前往上先生那里吗?”
彩が不思議そうに首を傾げる。珍客こと茶々と初が、襟首を掴まれて引きずられているところを見るに、またぞろ悪戯(いたずら)でもしでかして連行されているのだろうと当たりを付けた。
彩疑惑地歪了歪头。此时座客茶々和初看到他被人抓住领子拖着前行,于是便猜想又被捉弄着押走了。
「うん。その前にちょっと用事があってね。彩ちゃん、口を開けて。拒否権はないよ。これは命令です」
"嗯。在那之前我有一点事情。彩酱,张开嘴巴。没有反对权。这是命令。"
「そのお手の物が関係しているのですね? 承知しました。命令とあれば否はありません」
“那是您擅长的,与此有关系吗?我明白了。如果这是命令,那就没有反对的余地。”
茶々と初を廊下に転がしたまま、彩は大人しく静子の前まで進むと素直に口を開いた。所謂あーんという状況だが、意外に恥ずかしく思えて、静子は一つ咳払いをすると彩の口へとチョコレート片を投げ入れた。
茶々和初在走廊上滚来滚去,彩安静地走到静子面前,诚实地张开嘴巴。虽然这是所谓的“啊——”情况,但静子突然感到有点害羞,清了清嗓子,然后把一块巧克力丢进了彩的嘴里。
最初は噛まずに舌で舐めて探っていた彩だが、すぐに目を見開いた。口の中でチョコレートが溶けだしたのだ。しっかりと形を保った固形物が、このように蕩けることを奇妙に思っているのだろう。
一开始彩只是用舌头舔了舔,没有咬下去,但很快就睁开了眼睛。巧克力在她的口中开始融化,但保持了其固定形状,这种现象令她感到非常奇妙。
目を白黒させつつも、彼女がチョコレートを飲み込んだ音が聞こえた。
尽管她的眼睛一会儿黑一会儿白,但我听到了她喝下巧克力的声音。
「……不思議な食べ物ですね。しっかりと固いのに、以前頂いた水飴のように蕩けてなくなりました」
「......真是神奇的食物啊。它坚硬结实,但像之前收到的水飴一样融化消失了。」
「美味しいでしょ?」
“美味吧?”
「そうですね。不思議な香りと蕩ける甘さ、少し苦いですが気に入りました」
“是的。奇妙的香味和醉人的甜味,虽然有一点苦,但我很喜欢。”
彩のお眼鏡にかなったのか、彼女はいつになく柔らかい笑みを浮かべていた。普段のポーカーフェイスが崩れるほどだから、作り甲斐もあるなと静子は満足げに頷いた。
她戴上了彩色眼镜,笑容变得异常柔和。静子满足地点头,因为这比平常无表情的面容更有看点。
「しずこー、わらわにもー、あー」
"志保子,给我也来一个啊" (Note: this translation is based on the assumption that the original text is in Japanese)
「あー」
"啊"
だが茶々と初の声で我に返った彩は、いつものポーカーフェイスを貼り付けると、再び茶々と初を拘束した。
但是茶茶和初的声音让彩回过神来,她贴上了惯常的扑克脸,重新将茶茶和初束缚住了。
「まずはお叱りを受けてからです」
"先受到责备再说。"
「一個ぐらい構わないよ。彩ちゃんのデレた顔も見られたしね」
“没关系啦,你就开心地看到彩酱害羞的表情了嘛。”
そう言いながら、餌をねだる雛鳥のように口を開けて待つ、茶々と初にチョコレートを放り込んでやった。彼女たちは即座に噛んでしまったが、それでも口の中で蕩けるチョコレートに目を輝かせた。
她们像在乞求食物的雏鸟一样张开口,期待着阿茶茶和初把巧克力扔进去。她们立刻咬了下去,但看到在嘴里化开的巧克力还是眼睛放光。
「あまーい、おいしー、もういっこー」
甜甜的,美味的,再来一份。
「もういっこー」
"再来一次"
「いけません。おやつは、お叱りを受けた後です」
“不可以。零食是在被责备后吃的。” (Simplified Chinese)
彩に廊下を引きずられて滑りながら、二人はもう一個チョコレートが欲しいとねだる。彩はぴしゃりと叱りつけると、容赦なく二人を引っ張っていった。
被颜色拖着滑倒的两个人一边哀求再来一块巧克力,一边被彩狠狠训斥后,无情地被拉走了。
何とか脱出しようと二人がもがくが、彩も慣れたもので、幼子の脱出は叶わなかった。
两个人拼命想要逃脱,但是彩已经习惯了这种生活,无法帮助小孩脱离。
「残しておくから、ちゃんと謝ったら食べても良いよー」
“留着给你,只要道歉了就可以吃了哦。”
「残らぬじゃろう。残りは妾が頂くゆえ」
“它们都会消失的。剩下的就由我来享用了。”
静子が遠ざかる二人に声を掛けると、不意に後ろから声が掛かった。振り返ると同時に、手にしていた皿の重みが消失した。周囲を見やると、静子から皿を奪い、チョコレートを口へと運ぶ市がいた。
当静子走远,向他们喊话时,突然听到了背后的声音。同时回头时,手中的盘子重量消失了。四周环顾时,发现有人从静子那里夺走了盘子,带着巧克力送入口中。
「久方ぶりじゃな、静子。変わりないかえ?」
"好久不见了,静子。还好吗?"
「お市様、いつお越しに?」
“市姐,您什么时候来呢?”
「先ほど義姉上(濃姫)とともにな。義姉上は部屋で休まれておるゆえ、妾が静子を探しに参ったのじゃ」
刚才我和义姐(浓姬)在一起。由于义姐在房间里休息,所以我来找静子了。
先ごろから市は、出産のため暫く静子の病院へと入院していた。浅井三姉妹の末子、江(ごう)である。無事に出産出来たとの報せは聞いていたが、難産だったためか回復のため暫く入院をするとのことだった。
不久前,市政府表示,浅井三姐妹的末子江已入院待产。虽然听说她已安全分娩,但由于难产需要暂时住院恢复。
退院したとの報はないのに、患者本人である市の登場に、静子は酷く驚かされた。
静子听到患者本人市的出现时非常惊讶,因为她没听说病人已经出院了。
「お市様、もうお加減は宜しいのですか?」
"市姑娘,您还身体康健吗?"
流石の彩も、母である市の手前、茶々と初を引きずるわけにもいかず、二人を解放して頭を下げる。
纵使是住在这座城市的人,刚开始接触的时候也会尊敬和敬畏这座城市,毕竟是众多历史长河中相对较为能吸引人的城市。
「お陰様で、ようなった。先触れも無く訪ねたゆえ、堅苦しい挨拶はいらぬ。なんとも、不思議な味よのう」
“多亏了您,现在变成这样了。因为是突然来拜访的,所以不需要过于拘谨的问候。真是一种奇妙的滋味啊。”
「ははうえー、わらわにもー!」
"妈妈叫我也来了!"
「もー」
「もー」 translated to Simplified Chinese is "哎呀" (āi yā).
「ならぬ。その方らは、乳母に叱られて参れ」
"那是不可能的。那些人应该去被乳母吼一顿。"
「ぶー、ずるいー」
"哼,太不公平了"
皿に向かって手を伸ばす茶々と初だが、市は皿を高く掲げて防ぐ。意外にも躾に厳しい様子を微笑ましく思ったが、指摘して藪蛇になるのも詰まらないため、静子と彩は事態を静観することにした。
茶茶和初虽然伸手向盘子,但市却高高举起盘子防止。静子和彩觉得市对待纪律还挺严格的,不过也不好直接指出。于是她们决定观察事态的发展。
「処で、本日はどのようなご用で、こちらへお越しに?」
“在这里,今天您来有什么事情吗?”
「なに、静子に用があったのじゃが、兄上の許へと向かうと聞いた。流石の妾も、兄上を差し置くわけにはいかぬ。静子の帰宅を待って、話すとしよう」
“听说静子前来有要事,但已经去见大哥了。作为妾身,也不能不顾大哥而先走。我打算等静子回家后再谈。”
「(それは、我が家にお泊まり決定ですね)承知しました。では、戻り次第遣いを出しますので、それまでごゆるりとお寛ぎ下さい」
“那么,您就决定在我家过夜了呢。我知道了,等我回来后会送上物资,所以请尽情享受吧。”
「うむ、頼んだぞ。ほれ、そのように膨れるでない。義姉上に届けたあと、そなたらにも分けるゆえ、先に用事を済ませて参れ」
“好的,拜托你了。记住不要让它膨胀。送到姐姐那里后也要分给你们,所以快去办事吧。”
静子の返答を受け、満足げに頷いた市は、ふくれっ面の茶々と初に言葉を投げかけ、静々と去っていった。たおやかな所作とは対照的に、嵐のような人だなと静子は思いつつ、信長の許へと向かうことにした。
静子听到市的回答后满意地点了点头,然后茶茶生气地说了几句话,接着便默默离开了。静子想,市是一个既优雅又像风暴般的人。她决定前往信长处。
岐阜城へと登城すると、静子は茶室へと案内された。信長は決定事項を周知するときは、広間で会談を持つが、茶室へと案内されるときは、内密の話となる。
当静子登上岐阜城并被引入茶室时,信长通常会在会议厅宣布决定事项,但在引入茶室时,这就成为了一项机密。
静子としては茶室なんぞに近づきたくもないが、意外と案内される機会が多く、既に諦観(ていかん)の境地に達していた。
作为静子,她并不想接近茶室,但意外地接受了多次邀请,并已经达到了心境的平静。
いつもの如く、腰に佩いた刀を預け、手足を濯ぎ、室内の信長へ声を掛け、応(いら)えを得てから躙(にじ)り口より茶室へと入った。
一如既往地,将佩在腰间的刀放下,洗手洗脚后,向室内的信长喊话,等到回应后迈步走进茶室。
刀を預ける行為は、茶室へと持ち込むには無粋という面もあるが、相手に命を預ける姿勢を示すためでもある。密室である茶室へと招かれることは信長からの信頼の証であり、武器を預けて無手で入るのはそれに応える儀式としての一面を持つ。
“把刀子交给别人是一种不太得体的行为,但这也是表现出对对方付出生命的态度。受邀进入密室茶室代表着信长对你的信任,交出武器后徒手进入是对这一仪式的回应。”
入室前に手足を濯ぐのも、衛生面もさることながら、手足に毒を塗っていないという証明になる。こうした手順を踏んで、ようやく茶室へと入室が適う。
在进入房间之前洗手洗脚不仅可以保持卫生,而且也证明了双手和双脚上没有涂抹毒药。只有按照这样的步骤才能进入茶室。
「失礼します」
"失礼了" (shī lǐ le)
保温用の硝安を入れているため、意外に木箱が大きく、まずはチョコレートの納められた木箱が茶室へと入り、続いて静子が上がり込んだ。
由于里面装有保温用的硝安,木箱意外地很大,首先是用来存放巧克力的木箱进入茶室,然后静子紧随其后地上了去。
無論、献上品であるチョコレートは毒見役が確認をしたものを持ち込んでいる。茶室に入ると先客がいた。本来ならば京に居るはずの光秀だった。
无论如何,献上的巧克力必须经过毒品检查员确认后才能携带。进入茶室时发现已经有客人了。本应该在京都的光秀。
彼は静子に気付くと小さく会釈をし、静子も慌ててそれに倣う。
当他注意到静子时,他微微点了点头,静子也急忙效仿他的样子。
「静子は相変わらず、人を焦らせるのが上手い」
「静子一如既往地善于让人焦虑。」
「すみません。急いで参りましたが、如何ともしがたく」
“对不起,我赶了过来,但是无能为力。” translates to Simplified Chinese.
「構わぬ。戯れに言ったまでよ。キンカン、貴様も食うてみよ」
“无所谓,只是随口说说而已。金坷垃,你也尝一尝。”
早速献上されたチョコレートに手を付けた信長が、木箱を光秀の方へと回した。懐紙を取り出して、恭しくチョコレートを摘み上げた光秀だが、艶やかに光る褐色の物体を前に硬直していた。
信长很快就吃掉了呈上的巧克力,然后把木盒转到了光秀的方向。光秀非常恭敬地取出手帕,试图夹起巧克力,但当他看到这个闪亮的褐色物体时,却僵住了。
事前に知識を得ていなければ、到底食べ物とは思えないが、主人である信長が勧めた以上は、覚悟を決めて食べるより他なかった。
若不事先获得知识,根本无法将其视为食物,但既然是主人信长推荐的,只能做好心理准备并食用。
数瞬の間を置いて、光秀はチョコレートを口に入れた。最初こそ眉をひそめていた彼も、徐々に柔らかい表情を浮かべた。
数瞬间过去,光秀放进了巧克力。起初他皱了皱眉头,但慢慢地脸上露出了柔软的表情。
「不思議な食感です。手に持てるのに、口の中に入れると、搗(つ)きたての餅のように蕩け、ずっと滑らかに溶けていきます」
“这个口感奇妙。握在手中,放进嘴里却像磨碎的餅一样融化,一直滑溜溜地融化着。”
信長が二つ目に手を伸ばし、次いで光秀もそれに倣う。二つ目以降に関しては二人とも躊躇なしで口へと放り込んでいた。暫く無言でチョコレートを味わっていたが、やがて満足したのかチョコレートの箱を脇へと押しやった。
信长伸出第二只手,紧随其后,光秀也跟着伸出了第二只手。他们两个人都毫不犹豫地把第二个及以后的巧克力塞进嘴里。一段时间内,他们默默地品尝着巧克力,但很快就满足了,并把巧克力盒推到了一边。
茶室の温度で溶けても困るので、保冷剤(硝安)入りのファクチス袋を入れて、木箱に蓋をした。
为了防止在茶室内溶化,我们将加入硝安的保冷袋放入法克斯袋中,并盖上木箱盖子。
「さて、未知なる菓子を堪能したところで、本題へ入ろう。貴様らも知っていようが、北条に怪しい動きがある。奇妙が東国征伐へ赴けば、必ずや相見(あいまみ)えることになろう」
“好了,现在品尝了这个未知的甜品,我们进入正题。你们可能已经知道了,北条家有可疑的动向。如果奇妙前往东国征讨,一定会与他们相遇。”
「和睦を見越した上で、一戦交えるつもりでしょうか?」
「预料到可能会和睦后再决斗,您是打算先交战吗?」
「キンカンの言うように、わしと刃を交え、東国に北条ありと示した上で、和睦する腹積もりだろう」
“就像‘金柑’所说的,我们可以交锋,证明东国有北条一族的存在,然后打算达成和睦。”
信長は兼ねてから北条の動きに注視していた。敵に回るにせよ、軍門に降るにせよ、どちらを選択されても即応できるよう、北条家に関する最新の情報を収集するよう指示していた。
信长一直密切关注北条家的动向。他指示收集与北条家相关的最新信息,以便无论是选择与他们为敌还是投降,都能立刻做出反应。
そして日々齎される情報から、北条家の主流派が織田家と交戦する方向でまとまりつつあることを知った。相手が最初から落としどころを考えているのなら、かつて静子に語った計画も生きてくる。
然后从每天传递的信息中,知道北条家的主流派正在倾向于与织田家交战。如果对方一开始就考虑到了落脚点,那么之前对静子说的计划也会活起来。
「武田家の武威を挫き、上杉家をも取り込んだ今。東国に対する仕込みは、ほぼ終わったと言える。しかし、北条家が明確に我らに敵対姿勢を示した場合、こちら側に利点が生まれる」
“在挫败武田家的武威和吞并上杉家之后,对于东国的筹备工作可以说已经基本完成。但是,如果北条家明确表现出对我们的敌对态度,这样做将为我们带来利益。”
「北条家といくさをして負け、もしくは引き分けに持ち込み、織田家に対して敵対的な勢力を炙り出す、という事でしょうか?」
“这意味着进行北条家的战争并输掉或者达成平局,以揭示对織田家敌对的势力,对吗?”
「その通り。武田が大敗を喫し、上杉が我らに降った今。北条は東国最後の大国。ゆえに奴らが期待を抱く状況(・・・・・・・)を演じる必要がある」
“正是如此。当武田遭受重大失利,上杉向我们投降之际,北条成为东国最后的大国,因此我们必须扮演他们期望我们扮演的角色(.........)。”
語るまでもなく反織田連合が期待する結果とは、東国の雄たる北条が立ち、織田家に黒星を付ける事だ。
无需言说,反织田联盟所期望的结果是,作为东国雄鹰的北条站出来,在织田家中取得胜利。
「静子、貴様は状況を作れ」
"静子,你制造情况"
「はっ」
「はっ」 in Simplified Chinese is 「哈」.
「キンカンはその後、身内に潜む裏切り者、謀反を企てる者、内通などの疑わしき行動をする者、全て調べ上げよ」
“对于金刚橙后续,要调查身边存在的背叛者、策划叛乱者、内鬼等可疑行为者。”
「ははっ」
“哈哈”
「奴らは十分に窮しておる、餌を垂らせばダボハゼのように食いつく。その餌の先に釣り針があるなどとは、夢にも思っておらぬだろう。奴らが針に食らいついたが最後、一網打尽に仕留めるまでよ」
他们已经陷入绝境,如同沙丁鱼一样会贪婪地咬住饵料。他们从未想过,钓饵后面会有钓钩。一旦他们咬住钩子,最终就会被全数捕获。
大局を見据え、大勝を得るために小負を受ける。口で言うのは容易いが、実行するのは至難となる。相手が勝ったと判断する程度には損害を受けねばならず、尚且つそれ以上の損害を押さえつつ撤退せねばならない。
从大局出发,为获得大胜而承受小输。口头表达很容易,但实际操作却是极为困难的。必须承受一定的损失以便让对方认为他赢了,同时还必须控制并避免更大的损失,然后撤退。
これ程の難事を為すためには、時として信忠にすら秘密を持たねばならないだろう。信忠は静子を信頼しきっているため、ことが露見した後の事を想うと、今から憂鬱な気分になった。
要完成这样一项艰巨的任务,有时甚至需要对忠信保守秘密。忠信对静子完全信任,但一想到事情被揭露后的后果,现在就让人感到不安。
「時に静子よ、朝廷からの芸事保護はどうなっておる」
有时候静子啊,皇室对于艺术的保护有什么新动向吗?
「細川様など京の有力者の助力を得て、どこに何があるかを調査しております」
「得到细川殿等京都有势力者的帮助,正在调查各地的情况和藏匿之物。」
朝廷の役目について話を振られたので、静子は現状を報告した。芸事保護といっても、やる事は地味だ。まずどこに何がどの程度あるかのを把握する。それらを目録に纏め、その中から要不要を選り分ける。
当谈到朝廷的职能时,静子报告了目前的情况。虽然称之为文艺事业保护,但实际工作相当枯燥。首先需要了解每个地方都有哪些文艺资源以及它们的数量。然后将它们整理成目录,并从中选择关键的资源。
最後に現物を確認し、文書の類であるならば現物、または写しを得る。絵画や骨董品の類であれば、可能ならば買い取り、無理ならば持ち主として目録に登録していた。
最后确认原物,如果是文书类,则获得原物或复印件;如果是绘画或古董类,则尽可能收购,否则将其作为所有者列入目录。
写真が実用化出来ていれば、絵画の類についても写しが取れるのだが、写真技術については未だに研究成果が出ていない。
如果照片可以实现实用化,那么就可以将类似于画作的东西拍摄下来,但是照片技术方面的研究成果还没有出现。
「焦る必要はない。じっくり腰を据えて取り組むが良い」
“不需要着急。应该稳步努力,集中精力去处理问题。”
「はっ!」
"啊!"
「うむ。では一旦下がれ。後程用がある故、別室で待て」
“好的。那就暂时退出去。因为还有其他事情要办,待会儿在另一个房间等待。”
「承知しました。では、一度失礼します」
“明白了。那么,请您先失陪一下。”
信長は一旦静子に退席するよう命じた。静子は茶室を後にすると、蘭丸に案内されて近くに建てられた四阿(あずまや)で寛ぐことにした。
信长命令静子暂时离开。静子跟着兰丸前往附近的凉亭放松身心。
最近では堀が付き添わず、蘭丸一人が案内を務めるのだが、彼は毎度百面相を見せてくれるため、眺めていて退屈はしなかった。
最近蘭丸一个人带领游客,没有了堀的陪伴。但他每次都会露出各种表情,让人观看时一点也不无聊。
静子は四阿につくと、出された茶を飲みながら、持ち込んだ書物を読みふける。暫くしてから信長の呼び出しがあり、書物を懐に仕舞うと再び茶室へと向かった。
静子进入四阿后,一边喝着提供的茶水,一边沉浸在自己带来的书本中。过了一会儿,信长召唤她,于是她将书放回怀中,再次前往茶室。
「近頃は、多くの仕事を配下に任せているようだな」
「最近好像常常把很多工作交给下属处理了呢。」
「はい、私が居なければ回らない仕事は少なくなりました」
“是的,如果没有我,需要我来运转的工作变少了。”
かつて静子が始めた事業も、徐々に配下へと引き継がれ、それぞれの分野に専任の家臣が育ってきていた。入り江での養殖事業などは、完全に静子の手を離れており、今では報告書を眺めるだけになっていた。
曾经静子开始的业务也逐渐交给手下,各个领域都培养出了专职家臣。在海湾的养殖业已完全离开静子的手,现在只能看报告书。
これだけはと持ち続けていた南国の果実栽培についても、あと数年もすれば静子の手を離れていくだろう。
这南国的果实栽培,静子还坚持着不放手,但再过几年,也许她也要离开了。
「それで良い。貴様は何でも一人で抱え込もうとし過ぎだ。人に任せられる事は任せ、貴様にしか出来ぬ事をせよ」
“好的,你试图独自承担所有事情,这不太好。把可以托付给他人的事情交给他人,只做你自己能做的事。”
「はい」
"是"
「第一、貴様は己の事を疎かにしすぎるきらいがある。家臣や職人の休みに気を配っていながら、肝心の貴様は休もうとせんではないか! それは下の者も安穏と休んでおられぬ!」
"首先,您有忽视自己的倾向。虽然您会关心家臣和工人的休息,但关键时刻您不想休息!这会影响下级人员的休息!"
「は、はあ……(何故、私は説教されているのだろうか?)」
「唉,唉......(为什么我要受到训斥呢?)」
突然の信長からの叱責に静子は困惑していた。静子の内心を顧みることなく、信長の説教は一刻ほども続いた。
突然被信长责备让静子感到困惑。信长的训斥持续了近一刻钟,没有顾及到静子的内心。