アニメ映画「劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』」でアリスを演じる声優の竹達彩奈にインタビュー。
音楽ゲーム「DEEMO」を原作としたアニメ映画「劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』」が、2022年2月25日(金)より東京・新宿バルト9ほかにて公開される。本作は、ピアノを奏でる謎の存在・Deemoと記憶を失った少女、そして彼女らを取り巻く人々によって紡がれる、優しく切ない物語。ミステリアスなストーリー展開と併せて、ピアノで奏でられる美しい音楽の数々も魅力の作品だ。
そんな本作でアリスを演じているのは、声優の竹達彩奈さん。ゲームシリーズから同キャラクターを演じてきた彼女が本作、そして自身の音楽活動へかける想いとは。共演者である日向坂46・丹生明里さんの印象などと併せてお話を聞いた。
アリスは心の強い子
――人気音楽ゲームが原作の本映画ですが、竹達さんはゲームシリーズからアリスを演じていますね。はい。アニメ映画になると聞いたときは、ワクワクな気持ちと、ちょっと不安だという気持ちが入り混じっていました。というのも、ゲームだと基本的にはアリスしか喋らず、どちらかと言えばモノローグ的な語り方であんまり感情を動かさないので、アニメ映画でどうストーリーを膨らませるのか想像ができなくて。加えて、声優として作品に参加する前からゲームをプレイしていた一ファンとして、あの世界観を極力変えて欲しくないという思いもあったので、若干複雑な気持ちでした。ただ台本を読んだときに、「なるほど。そういう切り口で来たのか」と感じたんです。いい意味で新鮮な気持ちを持ちながらアフレコに臨めました。
――では、改めて台本を読んだときの印象を教えてください。ミライ・匂い袋・くるみ割り人形といったキャラクターが、アリスの感情をすごく引っ張り出してくれていると感じました。特に印象的だったのは、アリスが号泣するシーン。ゲーム内ではそういうシーンってほとんどないんですよ。あれは、猫のぬいぐるみであるミライや匂い袋、くるみ割り人形といった子供が見て・触って安心するアイテムがキャラクターとして登場したからだと思います。心のよりどころになるものがあったから、アリスも感情を出しやすかったんだろうなと思いました。
――アリスは全身真っ黒な謎の人物・Deemoの不思議な城の窓から落ちてきた、記憶をなくした少女です。竹達さんは、本作のアリスをどういう子だと感じていますか?落ち着いた子だと思いました。誰も知り合いがいない、どうしていいかも分からないという状況でも、何とか頑張って元の世界へ帰ろうとするのは、心が強いからできる行動だと思います。私が子供の頃は虫を見ただけで泣いていたので、同じように泣くことはあってもめげないアリスはすごい。木登りができないのに一生懸命に登ろうとするシーンは、キュンとしました。
――お話いただいたように、アリスは幼い女の子の役です。竹達さんは本作に限らず少女役を演じる機会がありますが、幼い子供を演じる際に声優として特別意識することはありますか?演じる際の意識とは少し違うかもしれませんが、家の近くに遊んでいたり、電車に乗ったりしている子供の声を聞くようにしています。子供って、「そんな音が出るの!?」って不思議な声を突然出すときがあるんですよね。例えばスンとした金切り声とか! そういう声の出し方や喋り方などを観察・研究して、ふだんからマネするようにしています。
――私の家の近くに幼稚園があるのですが、たまにすごい馬力の声が聞こえてきます。このまえ保育園の前を通った時、子供がすごく大きな声で「ドン・キホーテ」のあの曲を歌っていたんですよ! その声の大きさと曲のチョイスにビックリしました(笑)。でも、「歌いたい」と素直に思って、その感情のままに歌っているんでしょうね。そういった子供のピュアさは、お芝居するうえでも意識するようにしています。
――ドラマやアニメよりも、リアルな子供の声をお芝居の参考にしている。そうですね。自分で聞いた声をどこまでデフォルメするかは、作品によって変えています。
日向坂46・丹生さんは「よしよしっ」したくなるかわいさ――先ほどお話のあったミライ・匂い袋・くるみ割り人形はそれぞれ濱田岳さん、渡辺直美さん、イッセー尾形さんが演じられています。改めて3人のお芝居を聞いてみての感想を教えてください。アフレコではご一緒できなかったので、初めて3人のお声を聞いたのは完成した映像を見たときでしたが、想像以上に素晴らしいお芝居でした。キャラクターの魅力がお芝居によってより引き出されていると思いました。実はくるみ割り人形ってちょっと怖いというイメージを持っていたのですが、イッセーさんが演じるくるみ割り人形はかわいくて、すごく好きです。
――不思議な城の中で暮らす住人のひとりである仮面の少女は、日向坂46の丹生明里さんが演じています。仮面の少女って表情が全く見えないキャラクターで謎も多いので、難しい役どころなんですよ。それでも、ほとんど声優の経験がないとは思えないくらい、生き生きとしたお芝居で仮面の少女を演じていて、ただただ感心しました。私が想像していたよりも仮面の少女が魅力的なキャラクターになっていたので、驚きましたね。
――丹生さんとは2021年11月に行われた本作の生配信イベントで初めて対面されたそうですね。その時の印象はいかがでしたか?とにかく笑顔がキラキラで眩しい! 素敵な笑顔を持っている子でした。一緒にいるだけでこっちの顔が「ふにゃ」ってなっちゃう。この感覚は何かに似ていると思い返してみたら、家にいる犬が浮かびまして。「かわいいねー、よしよしっ」ってしたくなる、ペット的な天性のかわいらしさを彼女は持っている気がします。 一方で、10代の頃から仕事をしているということもあってか、私と干支がひと回り違うとは思えないくらい受け答えがしっかりしているんですよ。動物的なかわいさとお仕事に対しての情熱、そしてそのギャップがとても素敵な子だと思いました。
――まさに、アイドル。ですね! お話しているうちに共通点が多いことも分かったので、私にしては珍しく仲良くなれそうだと思いました(笑)。連絡先の交換やゲームのフレンド登録もし合ったので、これからもっと仲良くなりたいです。
――機会があればまた共演したい。またどこかでご一緒できたら嬉しいです。今度は私がアイドルの振り付けや、アイドルとは何かということを教えてもらいたいですね! アイドルのノウハウを教えてもらって、アイドルの役を演じるときに役立てていきたいです
純粋に音楽が楽しいと思えなかった過去――本作は音楽ゲームが原作ということもあって、音楽にこだわっている点も特徴です。ストーリーのなかで目まぐるしく音楽が変わっていくのが印象的でした。どの音楽もすごく綺麗なので、ぜひ注目して欲しいですね。
―――竹達さんも音楽活動をされていますが、デビューする前と今で音楽に対する向き合い方に変化はありましたか?私、人前で歌うことがとにかく苦手だったんです。だから、正直アーティスト活動の取り組みには後ろ向きでした。母や周りの方々が背中を押してくださったのでチャレンジすることを決めましたが、始めて4、5年は前向きになれなかった気がします。それでも、ライブを楽しんでくださる方や、「聞いていてよかったです」と言ってくださる方の声が原動力となって、音楽活動を続けられました。純粋に「音楽が楽しい、好きだ」と思えるようになったのは、2019年のライブハウスツアーですね。
――アーティストデビューしたのは2012年。7年後に前向きになれたんですね。もちろん、それまでもライブや作品づくりは楽しかったんです。ただ、自分には自分にしかできないものがあると前向きになれたのは、あのライブハウスツアーがきっかけでした。今では、何かを作ってみんなに喜んでもらうために全力で向き合っていく時間は嫌いじゃない、むしろ好きになっています。アーティストデビュー当時と気持ちは変わっていますね。
――喜んでいる人がいる限り、続けていきたい。そうですね。最近のライブは自分で演出やセットリストを決めているのですが、レーベルの方からは「そんなに頑張らなくてもいいですよ?」と言われることが多いです(笑)。それくらい、自分の首を絞めるセットリストにしちゃうのですが、来てくださる方の満足度を考えると、やれることはやりたくって。それでみんなの笑顔が見られるなら、努力を惜しまなくていいと思っています。
――本日はお話ありがとうございました。最後に改めて作品の推しポイントを教えてください。まず原作を知っている方には、ハンスとアリスの会話があるということをお伝えしたいです。とあるシーンで私はすごくあたたかい気持ちになったので、楽しみにしていてください。美しい音楽とミステリアスな世界観にきっと引き込まれると思うので、原作を知らない方にも是非観てもらいたいですね!
劇場版『DEEMO サクラノオト -あなたの奏でた音が、今も響く-』作品情報東京・新宿バルト9ほかにて全国ロードショー【スタッフ】原作:Rayark Inc.「DEEMO」総監督:藤咲淳一監督:松下周平脚本:藤咲淳一、藤沢文翁キャラクターデザイン:めばち主題歌制作:梶浦由記主題歌:Hinano「nocturne」(PONY CANYON)制作:SIGNAL.MD、Production I.G製作:ポニーキャニオン【キャスト】アリス:竹達彩奈仮面の少女:丹生明里(日向坂46)サニア:鬼頭明里ロザリア:佐倉綾音ミライ:濱田岳匂い袋:渡辺直美くるみ割り人形:イッセー尾形ハンス:松下洸平バレンスキー:山寺宏一